婦女子格言

ある婦女子がこう言っていた。
「好きなものが多いと困るけど、嫌いな物が多いと助かりますよね」
その言葉に含まれていた違和感により、私は自然と口を開いていた。
「逆はよく聞きますが……何故なのでしょう」
婦女子は悪戯を見咎められたかのように小さく口を開いた。
「確かに受け身である分には、好きなものが多く嫌いなものが少ない方がよいのかもしれません。でも想像して下さいな。
デパートで服を探すとき、消去法だと楽なんですよ。
レストランで食事を選ぶとき、食べられないものは選択肢から除外出来ますから、楽なのですよ。迷う時というのは、食べたいものがころころ変わりますでしょ。でも、嫌いなものが一つあれば選択肢が一つ、減りますもの」
私はなるほど、と膝を打った。