車窓から

揺られながら顔を伏せ、うとうとと微睡んでいた。
揺られながら顔を伏せ、漏れ出た欠伸を手で押さえた。
駅が近付いたのであろう、線路が車内に響く走行音が少し大きくなった。
私は顔を少しあげ、正面の窓を見る。
もう少しだ。
速度を緩めた列車に合わせて、車窓から見る風景もゆっくりと過ぎ去っていく。
スーパーが見え、住宅街から浮き出たかのような黄色い外壁が見え、目的の看板が見えた。
火土火土美房。
いつもと変わらず、看板にはそう書いてあった。